
「鳥のように飛べたら、どんなに楽しいだろうか…」
そんな夢を胸に抱えながら、Akiraは今日もひとり、家の窓から空を見上げていた。
彼はいつも留守番だった。
家族が出かけるたびに手を振って見送り、ドアが閉まる音を聞いたあと、
しんと静まり返る部屋で、世界から切り離されたような感覚に包まれていた。
けれど、心までは閉じ込められていなかった。
Akiraの想像力は自由だった。
そしてある日、ふと思いついたのだ。
「無線通信なら、どこにだって行けるんじゃないか?」
手元の小さなトランシーバーを握りしめ、
アンテナを伸ばし、世界へ向かって声を送る。
「Hello! Can you hear me?」
山を超え、海を越えて、届いた先の誰かと、Akiraは英語で話し始めた。
目を閉じれば、そこはもうアメリカの空の下。
“Today’s weather is great!”
“What did you have for lunch?”
相手の声がスピーカーから返ってくるたびに、
彼の胸は鳥のように軽くなって、
部屋の中にいながら世界を旅しているような気持ちになった。
最後に、Akiraはにっこりと笑って言う。
“Have a nice day!”
その声は、見えない翼にのって、
広い空を自由に飛んでいった。
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