
星が、今にも空から降ってきそうだった。
その夜、Akiraはいつものように、川沿いの欄干に腰かけて、夜空を見上げていた。
川のせせらぎが、遠い誰かの歌声のように静かに流れてくる。
空には無数の星たちが瞬き、まるでAkiraの存在を、静かに見つめ返しているようだった。
目を閉じると、不思議な感覚が全身を包み込む。
まるで自分の体が空に溶けて、夜の空間に吸い込まれていくような――。
気づけば、Akiraは夜空を自由に飛んでいた。
静かに、でも確かに。風を切る音もなく、星の間をすり抜けていくように。
見下ろすと、そこには昼間とは違う顔をした川が、
闇の中に銀の帯を引いて流れていた。
「さっきまで、水中花火してた川だ」
空想の中のAkiraは、さっきの自分を空から見下ろして、少しだけ笑った。
でも、彼の飛行は勇敢な冒険ではなかった。
小心者のAkiraは、川の流れに沿って下流へと飛ぶのが精一杯。
広い海の上まで飛ぶ勇気はなかった。
だから、海が見えそうになると、そっと引き返して、また上流へ。
気まぐれにくるりと方向を変えて、流れに逆らいながら空の旅を続けた。
時には星を追いかけ、時には雲の中に隠れながら、誰にも知られない旅を楽しんでいた。
そんな時間が、Akiraはたまらなく好きだった。
時計の針が進むことも、冷たい夜風が頬をかすめることも忘れて、
ただただ、空と川と、そして自分の想像の世界の中に身を委ねていた。
欄干の上に座ってから、もう一時間以上が経っていた。
それでも飽きることなど一度もなかった。
そこは、Akiraだけの空。
誰にも邪魔されない、静かで自由な夜の旅の舞台だった。
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