
夏といえば、誰がなんと言おうと花火だ。
中でも、AKIRAが夢中になっていたのは――水中花火だった。
街は夕焼け色に染まり、暑さがようやく和らぎはじめると、AKIRAはそわそわと橋へ向かった。
手にはいくつかの花火と、擦り減ったライター。
川の流れが静かになった頃を見計らって、橋の上に立つ。
「よし……いける。」
一本の花火を手に取り、導火線にそっと火をつける。
シュッ……という音とともに、火が走りはじめた。
「いーち、にーい、さーん!」
タイミングを測って、**えいやっ!**と川に向かって投げ込む。
導火線がちょうどいいところまで燃えたその瞬間、ポンッという鈍い音とともに、
水の中でまるく光が広がった。
花火はスローモーションのように、淡く静かに輝いては消えていく。
空に打ち上がる花火とはまるで違う、静かな興奮。
それが、たまらなかった。
そしてもうひとつの楽しみ、ロケット花火。
本来は空に向かって打ち上げ、夜空に爆音を響かせるものだが――
AKIRAの好奇心はそれを水中で爆発させるという方向に向かっていた。
「いくぞ、ロケット。」
点火と同時に、火花が**シュルシュルッ!**と暴れだす。
その火花が風に流れて、まるで意志を持ったようにこっちへ向かってくる。
「あっち行け、あっち行けってばっ!」
言ってるそばから、Tシャツにパチッ!
「あー、また穴あいた……」
けれど、それでも止められない。
このスリルこそが、夏の醍醐味だった。
夜の川辺に響くのは、遠くの盆踊りの太鼓の音と、AKIRAの小さな爆笑と悲鳴。
水面には、花火の名残がゆっくりと流れていった。
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