
今日は、いつもよりずっとまぶしい朝焼けで始まった。
窓を開けると、むわっとした蒸し暑さが押し寄せてくる。
九州の夏は、朝からまるで蒸し器の中にいるようだ。
ばあちゃんは昨日から親戚の家に出かけていて、家には僕一人きり。
いつもは騒がしいはずの家が、今日はしんと静まり返っている。
そんな中、空を見上げると、もくもくと入道雲が空高く立ち上がっていた。
まるで巨大な綿菓子が空に湧き上がっているようだったけど、
そのスピードは恐ろしいほど早かった。さっきまで晴れていた空が、
あっという間に不穏な灰色に変わっていく。
「まだお昼前なのに、なんか嫌な感じだな……」
その時だった。
どーん。
ごろごろごろ……。
雷の音が地響きのように響いてきた。
家の中はすっかり暗くなってしまい、おばけでも出てきそうな雰囲気。
本当は外の方が明るくて涼しいのだけど、
「雷におへそを取られるぞ!」というばあちゃんの言葉が頭をよぎる。
迷っているうちに、急に空が怒ったように泣き出した。
それも優しい雨なんかじゃない。
まるでバケツをひっくり返したような土砂降り。
しかも、風に押されて斜めに吹きつけてくる横殴りの雨だ。
「もうダメだ、家に戻ろう……」
そう思った瞬間、
ピカッ!
次の瞬間、
ドーーーーン!!!
まるでお腹の底に響くような音で雷が落ちた。
思わず身を縮め、「ひぇぇ……」と声が漏れる。
「やばい、やばい、やばい! ヘソ取られる!どこかに隠れなきゃ!」
僕は慌てて押し入れの戸を開けて、奥の布団の山に飛び込んだ。
真っ暗な布団の中で、体を丸めて、雷に見つからないようにじっとしている。
耳を澄ませば、まだ外ではゴロゴロと雷の低い唸り声が響いていた。
でも――不思議なもので、怖いはずの布団の中は、
ばあちゃんの匂いがして、なんだか安心してくる。
心臓のドキドキも、やがてゆっくりに。
そして、目を閉じているうちに、いつの間にか意識はふわふわと薄れていって――
…気がつけば、静けさの中にいた。
雷は遠くの山の向こうへと去り、窓の外にはまた少しずつ光が戻ってきていた。
僕は押し入れの中で、小さくくしゃみをひとつした。
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